予定より少し遅れて、私たちは、私の点滴のために、 昨日泊まったホテルの近くにある土佐市の病院に向かった。
（訳註：おそらく、土佐市民病院）
　車の中から、先日御詠歌を歌ってくれた お遍路が歩いているのを見かけた。
　車はトンネルを抜けて行ったが、そのあとの道は、前に歩いたので知っている道だった。
　川に沿って、白装束のお遍路の列が見えた。
　病院から戻る道で、また御詠歌遍路を見つけた。
　今度は逆方向に歩いている。
　おそらく、彼女は半島を越えていく道ではなく本島を歩いて行く道を取るのだろう。

　点滴を準備するために東京から特別に飛行機で来てくれた ヨシタケ・タマオカさんと彼の同僚で、今朝病院への送り迎えをしてくれた 地域マネージャーの方と一緒にコーヒーを飲んだ。
　ヨシタケさんは、ほかの予約があるというので、一緒にお昼ご飯を食べるのは、 次回までのお預けとなった。
　彼は、地震のことを話し、奥さんも彼自身も、学校にいる二人の子供たちに 電話もできないことで心配していた。
　それに、ミネラルウオーターや電池、トイレットペーパーなどは東京では売り切れていることなど・・・。
　私たちは、彼が7月にオランダに来た時、私たちが案内するということについて話した。
　私たちは、彼に二つのプレゼントを渡した： オランダの旅行案内書とGeert Makの「In Europe」という本で、 両方とも英語で書かれている。

　サントリーニ調のカフェレストラン・ティラ(Thira)で、お昼ご飯を食べようとしていると、 ホテルのオーナーイケガミ・コウジさんが一緒に食べようと誘ってくれた。
　お接待だと言う。
　パンプキンスープ、サジキ添えスヴラキ(Souvlaki with Tsatziki)とオリーブオイル、 フェタチーズの入ったグリークサラダ、最後にアイスクリームとグリークハニーをかけたグリークヨーグルト。 　これらすべてのギリシャの食材は輸入しているそうだ。
　完璧なギリシャ風の雰囲気とギリシャ音楽のバックグラウンドミュージック。
　それに、なんという素晴らしい景色！
　とてもいい時間だった。
　ホテルのマネージャーは、タイ、ミャンマー、ウエスト・イリアン （訳註：ニューギニア島の西部）、中国、 メキシコやその他のたくさんの国々を訪れた彼の旅行のことを話してくれた。
　リュックを担いだ歩き旅、時にはツアー旅行、しかしすべて少数民族を訪ねる旅だと言う。
「少数民族は社会に色づけしてくれる」
と彼は言った。
　グループツアーの途中から別れて少数民族と接触をするとき、
「彼らが英語を話さないときは、ふたつのジェスチャーだけで十分」と言う。
「眠るしぐさと食べるしぐさ」
「男の人にはタバコとウイスキーの小瓶、 女性には、ニワトリかそれに似たようなものをあげるんだ」
　彼は、タイとミャンマーの国境近くの学校に慈善事業として寄付をしたり、 マイクロクレジット(Micro Credit)として、彼が「豚の銀行」"Pig Bank" と呼んでいるものに資金を提供したりしている。
　Pig-bank というのは、貧しい家族が豚を買って、それを育てて売り、 そのお金で子供たちを学校に行かせるというものだ。
　彼は、特別な人物だ。
　もし、誰かがこのホテルを買い取ってくれれば・・・自由な時間ができて、 もっとたくさん本を読んだり旅行ができるのだが・・・。
　昼食の後、イケガミ・コウジさんは、 バスルームの漏れを修理するために仕事に戻った。

　それから少しして、彼は戻ってきて、約40キロ北の佐川町にあるINAX-houseに住んでいる オランダ人と日本人の夫妻 のところに車で送ってくれた。
　彼らは、私たちを緑茶とおいしいケーキでもてなしてくれた。
　何時間も話し込み、彼らの素敵な家と広い庭を丁寧に案内してくれた。
　外では強い風が吹いていた。
　イケガミ・コウジさんは
「春一番だ：春を運んでくる風で、明日は天気が良くなるだろう」
と言った。
　オランダ人の男性は素晴らしい助言をくれた。
　テレビのリモコンのボタンを押せば、7時と9時のニュースで 英語のニュースが聞けるといういうのだ。
　日本人は知らないようだ。
　私たちにとって、災害のときには、非常に有用な情報だ。

　夕刻、－食事を終えてから－イケガミ・コウジさんは私たちの このあと一週間分の宿の予約をするために電話してくれた。
（「もちろん、彼らは日本語を話しますよ！」）
　彼は、次に泊まる高価なホテルと割引の交渉もしてくれた・・・
　それから、もうひとつ、いい助言をくれた
　昔、お遍路たちは半島に並行して船に乗って移動し、終点から再び陸地を進んで行ったそうだ。
　彼の言うには、これが本来の遍路道なので、
「だから、船に乗ることは認められているのですよ！」
　私たちにとって、これは、一日の歩行距離をバランスさせるにはとても良い選択肢だ、 と言うのも、それがなければ、とても長い距離を歩かなければならないのだ。
　私たちは、ほとんどのお遍路たちが、３６番札所を打った後、 どうして本島の方に戻ってくるのか知らなかったのだ。
　彼は、明日私たちを車で船着き場まで送ってくれることになった。
　最後に、私たちはラウンジで一緒にコーヒーを飲んだ。
　私たちは、彼に小さなプレゼント－昔のオランダの風景を描いたガラス玉－をあげた。
　9月になると、彼は女友達を連れてフランスに来て私たちと会うことになった。
　コーヒーのあと、彼はまた仕事に戻った。
　庭園でしなければならない仕事があるそうだ・・・。