今日は、24キロもの長距離を歩くことになる。
　主に高松の市街地を歩き、２ヶ寺にお参りして、200mの高さまで登ることになる。
　近くを列車が通るため、あまりよく眠れなかったが、列車が通らないときは何とか眠っていた。

　朝食のときは、誰もいなかったので、二回呼んでみたが、いらいらしたうめき声が聞こえただけだった。
　仕方なく、テーブルの上に置かれたものを食べたが、夕食と同じように質素なものだった。
　7時には玄関に立っていた。少しふらふらする。

　出かけるときに、料金を支払うために誰かに会いたかった。
　宿賃と食事は払ってあったが、ビール代はまだだった。
　何度も何度も呼んだところで、お年寄りの女性が出てきた。
　彼女は、私たちの宿泊証明書を見せるように言ったので、私は、 それを取り出すために、リュックを全部開けねばならなかった。
　お金を払うと、彼女はいなくなってしまった。
　私たちは、誰もいない家に向かってサヨナラを言った。

　7時15分には、狭い道を通って田んぼや静かな家のある方に歩いて行った。
　長い間、川に沿ったサイクリングロードを歩いて行った。
　こんな早い時間にも、ゴルフ、サッカー、テニスなどスポーツをしている人たちがあちこちにいた。

　9時半には、８３番札所（一宮寺）に着いた。

一宮寺で

　７７番札所の手前で、手作りのお地蔵さんの焼き物を、歩き遍路たちに配っている人がいたが、 このところ、それが、ところどころに置かれているのを見かけていた。
　８３番札所には、それがたくさん並んでいた。

　お寺にお参りしたあと、車通りの多い二車線道路を歩いて行った。
　歩道もなく、蓋のある側溝もないので、あまり快適な道ではなかった。
　そのあと、川に沿った狭い道を歩いて、町を四分の一ほど回ることができたの助かった。

川の鯉

　汚い水の中には、何十匹もの赤い亀がいたが、そのすぐあとでは、コイの群れが騒いでいて、 その一部は水の上に出ているほどだった。
　その近くにあったウナギ料理店で、お昼ご飯にした。
　ウナギのフライ、ウナギのサラダ、ウナギのオムレツ。
　この汚い川で捕れたものでないことを願った。

　高松市内には、へんろの道標があまり見当たらないので、 時々どちらに行くべきかを調べなければならなかった。
　しかし、次第に、高松市の南西から北東に向かう正しい方角に進んで行った。
　再び車の多い道に出たが、その歩道の横に腰をおろして、 モーターバイクを修理している若いカップルがいた。
　その女性は突然立ち上がって財布を取り出し、私たちに、お接待としていくつかのコインをくれた。
　二人とも、にっこり笑って、
「ガンバッテクダサイ」
と言ってくれた。

　８４番札所（屋島寺）に行くには、広いコンクリートの道や階段を通って、 樹木に覆われた山に登らねばならない。
　頂上に着いた時、雨が少し降りはじめていたが、道の脇にある樹木の厚い葉で覆われているために、 雨にはほとんど気が付かないくらいだった。
　お寺に着いたのは、ちょうど３時半前だった。
　モンゴルから飛んでくる黄砂のために、視界はやはりよくなかった。

屋島寺大師堂

　お寺の境内にはたくさんの人がいた。
　ここには博物館さえあるのだ。
　参拝をすませると、山の反対側を雨で滑りやすい山道を下って行かねばならない。
　これまでの遍路道の中でも最も悪い道になる。
　ここは通りたくないのだが、代わりの道もあまりよくはない。
　同じ道を戻ると数キロも長くなるし、車のための有料道路はあるが、途中にトンネルがあるし、 一日の終わりでは車で下って行こうという観光客で込み合うだろう。
（訳註：Ynaさんたちは、 この有料道路を歩いて行けると思ったようだが、 この道路は人が歩行してはいけないという表示が、日本語で、書かれている）
　私たちは、山道を降りることに賭けてみることにした。
　下りには、たった45分しかかからなくて、昨年よりもずっと早く降りることができた。

　谷に下ったあとは、ガイドブックによると明日登ることになっている 次の山のふもとにある旅館高柳までほんの少しのはずだった。
　雨が少しだけ降っているが、涼しいのでとてもよかった。
　迷路のような通りを、次第に次の山に向かって行った。
　しかし、宿は私たちが考えていたよりもずっと遠いということが分かってきた。
　それに、旅館に着くためには、さらに登らねばならないことがはっきりしてきた。

　赤い棒を持った旗振りの人たちが、駐車場に入る車を整理するほど込み合っている 素敵なレストランを通り過ぎた。
　そのすぐ後に出た道には、私たちの旅館を示している標識があった。
　あと半キロほど登ったところだ。
　しかし、お寺に登るケーブルカーの駅に着いた時、間違っていたことに気づいた。
　少し戻らなければ、とそこにいた人がは言ってくれた。
　雨が強くなってきたが、来た道を下って行った。
　標識のところには、リクレーションセンターに向かう小道があったが、 2-300m行ったところで、また戻って、人に尋ねてみた。
　旅館は、標識のすぐ向かいにあった。

　ちょうど6時に、素敵で快活なご主人が英語で迎えてくれた。
「夕食が含まれていないことはご存知ですか？」
　これは知らなかったが、先ほど魅力的なレストランを通り過ぎたので問題ない。
　そのレストランは大ききくて、いくつかの建物が大きい内庭を囲んでいた。
　そこの職員たちは無線のイヤホーンで連絡を取り合っていた。
　山田屋は高級なうどんレストランだった
。 　私たちはここで、とてもいい時間を過ごした。

　旅館には、リーダーに率いられた女子のバスケットチームが到着した。
　彼女たちは、私たちを見るととても興味深そうにしていた。
　お風呂に行こうとすると、５人の女の子たちが歯を磨いていた。
「ハロー！」
というのを5回聞いた。
　階段を下りて行くと、上の窓から５つの顔がのぞいて、
「バーイ！」
　お風呂にいると、５人の人影が横切って、５人とも
「バーイ！」
とささやいた。
　お風呂から出てくると、すぐの部屋のドアが開いた。
　その子たちと少しおしゃべりをして、また５回の「バーイ！」

　清潔でよく手入れされた旅館に再び泊まれたのはとてもよかった。
　部屋は8畳で、押入れと床の間があった。
　オフィスではケーブルにつないでインターネットに接続できた。
　Melsがメールを受信しようとしている間、 私は少し眠っておこうと思って、早めにベッドに入った。
　外では、雨がやんでいた。